2024年11月30日 (土) 7:28
読書感想文「ブラックボックス」
ブラックボックスは、Uber eatsのような、 不安的な雇用環境で働く三十路前の男の話。 作品紹介を読んだ時は、社会派の作品かと思ったが、 読んでみると、意外な発見があった。 それは、テストステロン(男性ホルモン)の暴力性だ。 女性が、女性ホルモンに左右されるのは有名な話だ。 生理前になると「触らぬ神に祟りなし」と言わんばかりのオーラを放つ女性がいたりする。 しかし、男性もテストステロンに影響されるようだ。 刑務所にいる男性のテストステロン濃度は、 シャバにいる男性よりも高いというデータがある。 実刑者の男女比が、9:1であることも、 男らしさが、犯罪と因果関係があることを証明している。 ブラックボックスでは、テストステロンに支配される男の心の動きを、巧みに表現していて、 「男も生きづらいんだな」と感じた。 一般に、女性の方が生きづらいと言われる世の中だが、 女性の生きづらさは、可視化されている。 つまり「女は辛いもの」という大前提があるのだ。 だから、女性の苦しみは共有されやすい。 しかし、男性の生きづらさは、分かりにくい。 ましてや「男は泣くな」などと言われ、 自分の感情に、蓋をしている人が多い傾向にある。 だから、男性の苦しみは見えない。 もう少しだけ、男の人に優しくしてもいいかもって思ったわ。 普段、男性作家さんの純文学は、 あまり読まないのだが、 今回は、たまたま書店で気になったので、買ってみた。 書店は、Amazonにはない出会いがあるから面白い。 Amazonは、読みたい本を買うために使うが、 書店は、今、読みたい本はないけど、 活字に触れたい気分の時に、ふらっと立ち寄れるからいい。 しかも、そういう出会い方をした本ほど、 身になる本が多い。 最近は、ネット書店によって、リアル店舗が減り、 書店が1店舗もない「無書店自治体」は、 27.7%、1店舗以下の自治体が、47.4%にも上るという。 私は、1日1冊は読むレベルで、本が好きだから、リアル店舗がなくなるのは寂しい。 近所の店が潰れないためにも、課金しとかないとな。